自己破産という言葉はよく耳にすることがあると思います。ここでは、自己破産とは何かというところから、自己破産に関する手続きなどを詳しく説明します。

自己破産とは?

破産とは?

 破産とは、債権者に対してお金を返すことができなくなった等の場合に、財産を換価して債権者に対して公平に返済するための手続です。破産手続のうち、債務者自身が申し立てる場合を「自己破産」といいます。

自己破産の目的とは?

 破産手続には、①財産を換価して公平に返済するための手続と、②弁済できなかった債務について責任を免除するための手続があります。
 ②の手続を「免責手続」といい、自己破産は、②の免責手続の中で、免責許可決定を受けることを目的としていると言ってもいいでしょう。

財産換価手続~全ての財産が無くなってしまうの?~

基本的な考え方

 上で説明したように、破産とは、財産を換価して債権者に対して公平に返済するための手続です。そのため、債務者の財産は全てお金に換えてしまうことが基本になります。例えば、所有している不動産や自動車などの財産は手放さなければならないのが基本的な考え方です。
 破産法34条1項にも「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする」とされています。

自由財産とは?

 しかしながら、破産法には、「第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない」(34条3項)とも記されており、34条3項に規定の財産についてはそのまま持っていることができることになっています。このような財産を「自由財産」といいます。
 また、自由財産は、拡張の手続をすることで拡張が認められる場合もあります。拡張が認められたものについては、自由財産となるため、そのまま持っていて良いことになります。
 裁判所によって運用が異なりますが、以下のようなものについては、自由財産の拡張の裁判がされたものとして、自由財産とすることができる運用がされている裁判所もあります。

 ・残高の合計が20万円以下の預貯金
 ・見込額が20万円以下の生命保険の解約返戻金
 ・処分見込額が20万円以下の自動車
 ・電話加入権
 ・家財道具

自動車や家はどうなるの?

 財産のうち、多くの人が関心をもつ財産は「家(不動産)」と「自動車」ではないかと思います。
 今までに説明したように、基本的に、財産は全てお金に換えなければなりません。そのため、自己破産手続においては家や自動車は換価しなければならない場合がほとんどであるといえるでしょう。
 しかし、ローンが完済済みの自動車の場合には、東京地裁においては、処分見込額が20万円以下であれば自由財産の拡張が認められたものとして債務者の手元に残すことができます。そのため、例えば、減価償却期間を経過しているものについては、無価値であると判断されて自由財産とすることができる場合があります(もっとも、減価償却期間を経過していても、市場価格が20万円以上の場合などは換価されると考えられるため、ケースバイケースの対応になってくるでしょう)。

免責手続~免責不許可事由って?~

免責が許可される場合

 最初に説明したように、自己破産の目的は、免責手続の中で免責許可決定を受けることであるといえるでしょう。では、免責許可決定がされる場合とはどのような場合でしょうか。
 破産法の条文で「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする」(破産法252条)と定められています。この条文の中の「次の各号に掲げる事由」のことを免責不許可事由といいます。したがって、免責不許可事由のいずれにも該当しなければ免責がなされるという定めだといえます。

免責不許可事由とは?

 免責不許可事由とは、破産法252条1項各号に規定されており、以下がその中から抜粋した代表的な事由です。

 ・破産財団の財産の価値を減少させたり、財産を隠匿したりした場合
 ・クレジットカードの現金化をした場合
 ・ヤミ金など著しく不利益な条件で借金をした場合
 ・特定の債権者にだけ返済した場合
 ・浪費やギャンブルを目的として借金した場合
 ・収入額や債務額を偽って借金したり、クレジットカードを利用したりした場合
 ・虚偽の債権者名簿を提出した場合
 ・裁判所に対して説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりした場合
 ・破産管財人の職務を妨害した場合
 ・前回の破産等から7年経過していない場合      など

裁量免責とは?

 では、上記のような免責不許可事由に該当した場合には、絶対に免責は許可されないのでしょうか。
 破産法では、「同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」(252条2項)と定められており、免責不許可事由に該当した場合であっても、裁判所が一切の事情を考慮して免責を認めるという制度があります。これを裁量免責と言います。
 実際、免責不許可事由に該当した場合であっても、多くのケースで裁量免責により免責が認められています。

資格制限

基本的には仕事には影響なし

 自己破産は、基本的には仕事には影響を与えません。会社に知られることはありませんし(※会社から借金をしていた場合などは会社も債権者として自己破産の事実を知ることになります)、給与を差し押さえられたりすることもありません。もちろん、解雇されることもありません(自己破産のみを理由として解雇されたら不当解雇です)。

一定の資格所有者は影響あり

 しかし、一定の資格の保有者は、登録を取り消す必要があるなどの影響があり、それによって仕事に影響が出てくることもあるでしょう。一定の資格とは、他人の財産の管理に関わる可能性がある資格などであり、以下のようなものがあります。
 
 ・宅地建物取引士 
 ・貸金業
 ・警備員
 ・司法書士
 ・社会保険労務士
 ・公認会計士
 ・税理士         など
 

まとめ

職業や財産に一定の影響がある

 以上のように、自己破産によって、財産や職業に一定の影響が及ぶ人も存在します。影響が及ぶ可能性のある人については、他の手続きを検討することも必要となるでしょう。

他の手続の選択肢は?

 他の手続きとして代表的なものは個人再生手続があります。個人再生手続は、自己破産と同じく裁判所を介した手続になります。原則として3年以内に返済をする必要があります。
 財産や職業に関して、自身の希望を踏まえた選択肢を多くするためにも、なるべく早く弁護士に相談することが必要です。自己破産をはじめとした債務整理をお考えの方は弁護士にご相談ください。