弁護士を選ぶ時、弁護士費用が高いか安いかというのは判断材料の1つになると思います。
ただ、弁護士費用が安いと仕事が適当なのではないかなど、心配に思う方もいるかもしれません。
この記事では、弁護士費用に関する考え方をお伝えします。
(私見ですので、様々な考え方があるという前提の上、ご参照ください。また、特定の事務所に対する言及をしているわけではありません)。

弁護士費用とは

 弁護士費用は、一般的に以下のような種類があると言われています。
日本弁護士連合会のHPを参照
①着手金:着手金は、弁護士が事件処理に着手する前に依頼者が支払う費用です。事件の結果に関係なく返還されない費用となります。
②報酬金:報酬金は、事件処理の成功の度合いに応じて支払うものです。一般的に成功報酬と言われている費用となります。
③実費:実費は、切手代や印紙代、コピー代など、事件を処理する際の出費です。
④手数料:手数料は、契約書の作成・遺言書作成・登記など、争いのないケースで依頼する場合の費用のことを言います。
⑤法律相談料:文字通り、法律相談をする際の費用です。
⑥顧問料:企業や個人と顧問契約を結んだ際に、継続的に行われる法律事務に対して支払われる費用です。

 この記事においては、依頼者が事件を依頼する際に判断材料として用いることが多いと思われる「着手金」及び「報酬金」のことを中心に記していきます。

弁護士費用の自由化

 平成16年4月1日までは、日本弁護士連合会(日弁連)が定める報酬基準があったため、弁護士費用はどの弁護士に依頼しても一律に同じ料金でした。しかし、平成16年4月1日から、弁護士報酬は自由化され、個々の弁護士がそれぞれで費用を定めることになりました(宮崎県弁護士会HPを参照
 そのため、現在では、法律事務所の費用をインターネットなどで検索すると様々な費用形態が存在していることがわかると思います。

弁護士費用の決まり方

 弁護士費用は様々な要因によって、各弁護士が定めていますが、以下のような要因で決まることが多いのではないかと考えられます。

旧報酬基準に準拠

 上記の通り、弁護士報酬は自由化されましたが、今でも平成16年4月1日まで用いていた報酬基準(旧報酬基準と言います)に準拠して弁護士費用を決めている弁護士は多く存在します。

専門性

 高い専門性を有し、レベルの高い仕事を提供する場合、相応の費用を取ることが可能です。専門性を有する事務所では、その希少価値や仕事の質などから、高めの費用を設定しているところもあるでしょう。

経費の多寡

 営業活動に経費が多くかかっている事務所では、経費を賄うだけの収入がなければ事務所を継続的に運営していくことができないため、経費の高さに応じた費用設定をしていると考えられます。
 弁護士が営業する上での経費には様々な種類のものがあるため、以下では、経費の点について詳しく見ていくこととします。

弁護士の経費

 弁護士の経費のうち、弁護士費用に影響を与える可能性があるようなものは以下のものが挙げられます。

事務所賃料

 法律事務所の賃料は経費のうち、多くの割合を占めていることが多いでしょう。特に、東京都心や主要都市のターミナル駅の駅前のビルなどに事務所を構えているような法律事務所は、結構な額の賃料を支払っているのではないかと考えられます。

職員の給与

 職員の給与も、1人あたり毎月数十万という金額が支払われているため、見逃すことができません。大規模な事務所では、多くの事務職員を抱えているところもあるため、全職員の給与は相当な額になってくるでしょう。また、法人化した法律事務所や職員を5人以上抱えている事務所など、保険の事業主負担分が掛かってくる事務所もありますので、そのような事務所は更に負担が増えることになります。

SEO対策

 今は法律事務所をインターネットで検索する人が多い時代ですので、ホームページを検索エンジンで上位に表示させるために、SEO対策をしている事務所もあると思います。そういった事務所の中には、SEO対策やコンサルティングを外注しているところもあり、その料金が経費として掛かってきます。
 また、事務所でwebサイト運営の担当者を雇用し、内製化しているところもあるようですが、その場合には担当者の給与が掛かってくることになります。

広告宣伝費

 法律事務所の中には、広告を出稿している事務所もあるため、そのような事務所は広告宣伝費が掛かってきます。よく見るのは、検索エンジンの検索結果ページの上の方にキーワードに関連した広告が表示されるような、リスティング広告といわれるものです。
 試しにGoogleなどで「法律事務所」と検索すると、検索結果の最初の方に「スポンサー」と書かれた法律事務所のページが出てくると思います。
 また、テレビCMなどweb以外の媒体に広告を出稿している法律事務所も見かけますが、そのような事務所も広告宣伝費は多額であると考えられます。

ポータルサイトへの登録

 最近多く見かけるのは弁護士のポータルサイトです。ポータルサイトとは、複数の弁護士が載っている弁護士比較サイトのようなものです。弁護士ドットコムや弁護士ナビシリーズ、ココナラ法律相談、弁護士相談広場シリーズなどがあります。
 ポータルサイトでは、ポータルサイト自体がSEO対策やリスティング広告への出稿などをしており、ポータルサイトが検索の上の方に表示されることも多々あります。
 ポータルサイトに弁護士が登録する場合、1か月10万円の掲載費用がかかるようなポータルサイトもあるなど、無視できない額の経費となる場合があります。特に、複数のポータルサイトに有料登録している弁護士の方は、毎月の掲載費用が結構多額になるのではないかと思われます。

小括

 以上のように、弁護士の経費のうち、弁護士費用に影響に与える可能性があるようなものを見てきました。このような経費を多く支出している事務所の場合、それを補うだけの収入をどこかで得なければ事務所を持続的に運営していくことはできません。そのため、経費が掛かっている分、弁護士費用に上乗せをして、高めの弁護士費用の設定になっている法律事務所もあると考えられます。

弁護士費用が安くても問題ない場合が多い

 今まで見てきたとおり、弁護士費用の高い、安いは弁護士としての力量などを表すものであるとは、必ずしも言えません。弁護士としての質とは全く別の要因で弁護士費用が高くなっている法律事務所も数多く存在しているでしょう。
 そのような事務所と比較すれば、広告宣伝費や事務所賃料、職員への給与などの経費を抑えることによって、弁護士費用を安くすることは十分に可能であるため、弁護士費用が安いからといって問題があることは少ないと考えられます。

まとめ

弁護士費用は判断材料の1つ

 弁護士を選ぶ際の判断材料である「弁護士費用」について見てきましたが、弁護士費用は、弁護士を選ぶ際の判断材料の1つでしかないともいえます。
 弁護士に依頼すると、自分の権利利益を弁護士に託すことになりますし、継続的にコミュニケーションを取っていく必要も出てきます。そのため、弁護士との相性や信頼がおけるかどうかということも重要な要素となります。

経費削減で安くすることは可能

 ですが、弁護士費用が重要な判断材料の1つであることも間違いありません。
 上記の通り、弁護士の質とは無関係な観点で高額な弁護士費用になっているところもあるため、そのような弁護士費用を負担することは、依頼者から見たら「無駄な負担」ともいえるでしょう(もちろん、各事務所の広告宣伝費などが弁護士へのアクセス向上に寄与しているという面はあるため、それらの費用を支出することが悪いとは考えていないことは記しておきます)。
 経費が高いがゆえに弁護士費用が高額になっている事務所と比べれば、経費を削減することによって、弁護士費用を安くすることは十分に可能です。したがって、弁護士費用が安いからといって、適当な仕事をしているのではないか、専門性がないのではないかなどと心配しなければいけないケースは少ないといえるでしょう。